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ロザリオの聖母                                 記念日 10月 7日


 全世界のカトリック信者が最もしばしば誦える祈祷の一つはロザリオであろう。それは極く簡単で誰にでもわかる。無学な信者でもその意味を悟り得るが、またロザリオは深い玄義をも蔵しているから、偉い学者でもなかなかその奥底まで究め尽くすことは出来ない。

 ロザリオには(1)大切な信仰箇条や(2)イエズス御自身の教え給うた祈祷や(3)大天使ガブリエルが聖マリアに語った言葉や(4)聖会がそれに付け添えた短い祈祷などが含まれている。これらの祈祷は天主の讃美と童貞聖マリアに対する祈願とに外ならない。

 我等はこれから右の各々について簡単に調べてみよう。
(1) 大切な信仰箇条、聖教の大切な信条は一切ロザリオの使徒信経に含まれている。信ずべき事は公教要理の第一部に説明してあるから。益々信条を語り信仰を堅くするには、それを度々読むがよい。信仰は一つの徳であり聖寵であって、しばしばそれを心に繰り返せば繰り返すほど、堅固になり効果を生ずる。しかし公教要理は毎日、時と所とを選ばず読む訳には行かぬ。けれども使徒信経なら毎日、明るいときでも暗いときでも、健康の人も病気の人も誦える事が出来る。それでロザリオの始めには、天主の聖教を謙遜に信ずる様に、まず信経を誦える。それは信仰が堅ければ堅いほど、次の祈祷が良く出来るからである。

(1)主祷文、「天にまします」で始まる主祷文はその名の如く我等の主イエズス・キリストは御自ら教え給うた祈祷である。即ち、ある日使徒達は主の御許へ来て「主よ、私共に祈り方をお教え下さい」とお願いした。というのは彼等は度々イエズスのお祈りになる所を見て、自分等もそういう風に祈りたいと思ったからである。するとイエズスは仰せられた「汝等祈る時にはこう誦えるがよい、天にまします我等の父よ、願わくは御名の尊まれん事を、御国の来たらん事を、御旨の天に行わるる如く地にも行われん事を、我等の日用の糧を今日我等に与え給え、我等が人に赦す如く我等の罪を赦し給え、我等を試みに引き給わざれ、我等を悪より救い給え。アーメン」と。この主祷文は完全無欠な祈祷である。人間の智慧では到底考え出すことが出来ない。故にロザリオの祈祷にも之を加えたのである。この祈祷にも深い深い玄義が含まれている。しかしやはり何人にもたやすく悟ることが出来る。

(2)天使祝詞、大天使ガブリエルがマリアに現れて「めでたし聖寵充ち満てるマリア」とその無上の特典を祝いだ詞である故にこの名がある。人間で、かような尊敬讃美の言葉を献げられた者は昔から今に至るまでその例がない。しかも大天使は天主の御意を受けて天主御自身の御言葉を語ったのである。それは実際聖なる言葉である。しかし聖会がそれに付け加えた言葉もまた聖なる言葉である。それは天主の聖母に対する祈願で読者も知る通り「天主の御母聖マリア、罪人なる我等の為に、今も臨終の時も祈り給え」というのである。なお「願わくは父と、子と、聖霊とに栄えあらんことを。始めにありし如く、今もいつも世々に至るまで。アーメン」という言葉も聖である。これは天主への讃美である。すべての被造物は天主を称えている。天国に於ける天使と聖人とも常に天主を誉めている。故に人間も天主を称讃せねばならぬが、不幸にして多くの人々は、それを忘れ、感謝の心も失っているから、ロザリオの祈祷に於いてその義務を果たし、しばしばこれを繰り返すべきである。
 以上の祈祷より成るロザリオの祈祷は本来天主の聖母を崇める為の信心の勤めである。従って「めでたし聖寵充ち満てるマリア」の祈祷が最も多く繰り返されるのも当然であるが、しかし聖母を考える時にはいつでもイエズスを考えぬ訳には行かぬ。この故に天使祝詞を誦えながら、我等は主の御生涯の玄義を心の中で黙想する。ロザリオはかように簡単で意味深い。それで人々は好んで頻りにこれを誦えるのである。
 天主御自らもこれをよみし給う事を幾多の奇蹟を以て実証され、且つこれに特別の力を与えられた。歴史上の一つの事件はわけても有名になった。それは1571年、既に数度の戦争に連勝したトルコは、全欧州なかんずくローマを征服してキリスト教を根絶しようと、大艦隊を率いてイタリアに向かおうとした。教皇は諸国の王侯に激してその援助を求められたが、当時の政情から僅かに一小艦隊を編成する事しか出来なかった。敵の半ばにも満たないこの勢力を以て相手を迎え討つ為に、教皇はすべてのカトリック信者達にロザリオの祈りを命ぜられた。そして御自身もローマで司祭達信者達と心を合わせてそれを誦えられ、艦上の将兵も同様にした所、1571年10月7日の最初の海戦に、キリスト教徒方は敵の艦隊に包囲され、数隻の軍艦を撃沈され、何人も最早抗戦は絶望と考えたのに、その後戦況は奇跡的に優勢を示し、遂にトルコ艦隊の大部分を撃滅する事が出来た。即ちロザリオの祈祷はそのかくかくたる大勝利をもたらし、且つ全欧州の信仰を救ったのであった。その勝報一度ローマに達するや人々は驚喜惜く能わず、早速諸々方々で感謝の礼拝式を執行した。聖マリアの連祷に、「ロザリオの元后、我等の為に祈り給え」という句が加えられ、10月7日がロザリオの祝日と定められたのもその時からである。
 ロザリオの祈祷が信仰に凱歌をもたらしたことは、その後もしばしばあった。聖会に対する迫害が信者一同のロザリオの祈祷により克服されたことも幾度となくある。その他ロザリオの祈祷のおかげで試練に打ち克ち、人々を改心させ、困った時に救われたような例に至っては枚挙にいとまがない。現代に於いても方々の国で聖会の信者は迫害されている。故に我等は皆心をあわせて、ロザリオを祈り、信仰の勝利を獲得しようではないか。

教訓

 もっとロザリオに親しもう。今はロザリオの必要な時代である。それを考えてこれを善用しよう。熱心に祈れば仕事を一層立派に成し遂げることが出来る。またつらい時には心が慰められる。しかもロザリオの祈祷を恭しく誦えるならば、聖母の御助けを得て必ず天国に迎えられるに相違ないのである。