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聖ペルペトゥア、聖フェリチタス両聖女殉教者 Sts.Perpetua et Felicitas MM     記念日 3月 7日


 聖会初代の殉教者中特別有名なのは、ペルペトゥア、フェリチタス両聖女であろう。その為両聖女の名前は毎日のミサ聖祭中に唱えられる事になっている。

 西暦202年ローマ皇帝セプチモ・セヴェロは全国にユダヤ教及びキリスト教の禁令を公布した。その内ユダヤ教の方は間もなく信教の自由を許されたが、キリスト教の方は益々圧迫が甚だしくなるばかりで、分けてもアフリカに於ける迫害は残忍過酷を極めたものであった。かくて203年か204年に法官ミヌチオの前に引き出された聖教志願者の中にはサトゥルニノ及びセクンドゥロという二人の奴隷や弁護士レボカート、その妹で既にさる人に嫁いでいたフェリチタス、また貴族の出であるペルペトゥアという夫人なども加わっていた。
 これらの人々に教理を教えていたのはサトゥロという若い信者であったが、彼等が捕縛された時あいにく彼は不在であった。しかしその事を聞くや否や彼は直ちに駆けつけて彼等を励まし、自分も囚われの身となった。以下記す所は聖女ペルペトゥア及び聖サトゥロの獄中記によったものである。

 彼等が最初監置された所は本当の牢獄ではなく、何故か普通の家屋の中であった。そこでペルペトゥアはつらい思いをせねばならなかった。というのは、異教人である父が彼女の可愛い子供の為に、また年老いた自分の為に、是非キリスト教を棄ててくれと、切に頼んだ事であった。彼女はその恩愛の情のしがらみを必死の思いで突き破って信仰を守り通した。そして間もなくその家に捕らわれている他の人々と共に、洗礼の恵みを受けたのである。
 役人はこれを嗅ぎつけると彼等を本当の牢獄に打ち込んだ。狭い中へ大勢詰め込まれ、その上獄吏の呵責を受けねばならぬ信者等の苦しみは一方でなかった。しかしやがて二人の助祭が役人に掛け合って、一同いくらかましな監房に移してもらう事が出来た。
 彼等がいよいよ裁判官の前へ引き出されたのはそれから暫くしての事であった。その時ペルペトゥアの父は又も娘に、「老い先の短い自分や頑是ない孫を可哀想と思うなら、どうぞキリスト教を棄てて家へ帰ってくれ」と涙を流して頼んだ。そして信者達の恐ろしい死に様を述べて彼女の反省を促しもした。ペルペトゥアはめっきり白髪のふえた父や愛する子供の事を考えて胸も張り裂けるような苦悩を覚えた。けれども一切を天主への愛の為に忍び、毅然として信仰に殉ずる覚悟を定めた。

 裁判官は決まり切った問いをかけて後、彼等を野獣の餌食にする宣告を下した。それから再び牢獄に連れ戻された時、ペルペトゥアは兄弟のディノクラトが救われたという示現を受けた。彼女はたえず彼の為に祈っていたのである。そして殉教の日が迫って処刑場にほど近い獄屋に移されてから、又も兄が改宗したという示現を蒙り、深い喜悦と慰めとを覚えた。父はなおも彼女の心を翻そうと言葉をつくしてすすめたが、ペルペトゥアの決心は勿論金鉄よりも堅かった。

 ペルペトゥアの仲間のフェリチタスは別な監房に入れられていた。始めに記した如く彼女は既に夫のある身で、懐妊中であったから、定めに従って子供を分娩して後処刑される事になった。彼女は出産の時ひどく苦しんだが、残酷な獄吏はかえってそれを嘲弄した。しかし彼女はよく何事も忍耐して他の信者達の如く快活に振る舞い、天国に行く日の一日も早く来たらん事を待ちわびていた。

 遂に一同は闘技場に引き出され、野獣の餌食にされる事になった。しかし彼等は死に直面して少しも恐れる気色なく、かえって喜ばしげに笑み交わしていた。ペルペトゥアは讃美歌を歌い、レボカートやサトゥルニノやサトゥロ等は観衆に来るべき天主の審判について語り、又裁判官に「貴方は私共を裁判なさいましたが、天主様は貴方を裁判なさいましょう」と言った。その為に人々は大いに怒り、まず彼等を腹の癒えるまでむち打たせた。殉教者たちはキリストが同じ刑を受け給うた事を偲びつつその苦痛に耐えた。間もなく野獣が場内に放たれた。一匹の豹がレボカートとサトゥルニノに飛びかかって打ち倒す。と見ると、熊がその体を引き裂いた。サトゥロだけは始めどの獣にも襲われず、獄中で教理を教えていた獄吏と語り合っていたが、やがて豹が来て彼に一撃を加え、鮮血が流れるのを見ると、残忍な観衆は「綺麗になったぞ!」と一斉に囃し立てた。サトゥロは重傷に屈せずかの獄吏の指輪を取り、之を自分の血に浸して返し与え、「では御機嫌よう!私の事を忘れずに、これを見て勇気を出してください」と言った。

 ペルペトゥアとフェリチタスは網に包まれ、牛の角にかけられて投げ上げられた。フェリチタスは地上に落ちてから起きあがる事が出来なかったが、ペルペトゥアは立ち上がって髪や衣服の乱れを直し、フェリチタスの手を取って助け起こした。それを見た観衆は一瞬感動したようだったが、やはり彼女達を殺す事を望んだ。それでペルペトゥア、フェリチタス、その他まだ死なずにいた信者等は、共に刀で斬り殺されて殉教の栄冠を受けた。

教訓

 これらの聖殉教者、殊に聖女ペルペトゥアの深い信仰を見れば、我等も如何なる艱難の時にも天主を信ずる旨を勇ましく言い現し、かつ終わりまで信仰を守る為に「願わくは我等の信仰を増し給え!」(ルカ17−5)と祈らずにはいられまい。