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十八  イエズス嘲弄されたもう



 カイファが議員らと共に法廷を立ち去るやいなや。悪人たちはみな、蜂の群のように、救世主の上に飛びかかった。それまでは始めの獄吏四人のうち二人が絶えず主の縄を持ち、他の二人は審議の間、交代のため離れていた。すでに訊問中に二、三の悪党たちが主の髪やひげのふさふさした所をむしり取ってしまった。その房毛を数人のよい人は気がつかぬように拾い上げ、それをもってこっそりと逃げた。審議中すでにかれらは主に痰を吐きかけたり、拳で主を殴りつけ、とげのある棒でたたいたりしていた。しかしそのいたずらは今狂気沙汰となって来た。かれらはわらや木皮で作った沢山の冠をかわるがわる主にかぶせて、冒涜的な嘲弄の言葉を吐きながらその頭を殴りつけた。かれらは「そら、父の王冠をかぶったダビデの子を見よ!」あるいは「おい、見ろ、ソロモンよりも偉大なものを。」または「これは子供の結婚式を挙げる王さまさ。」と言った。このように主が人類の幸福のためにはっきりと、あるいはたとえをもって語られた、あらゆる永遠の真理を嘲弄した。かれらは主を拳や棒を持って殴り、あちら、こちらに突き飛ばし、痰を吐きかけたりした。最後にかれらは土地産の太い麦わらで王冠を編み、今の司教の意かぶるような高い帽子を作り、それを主にかぶらせ、その上に麦の花環をかけた。主からすでに編み物の着物を脱がせていたかれらは、古いぼろぼろのマントを主にかけ、おん首を鉄の輪で締めた。それは肩から胸を越えて膝まで垂れていた。この鎖のはしには二つの大きなとげのある輪がついていて、歩く時や倒れた時におん膝を痛々しく傷つけた。かれらは改めて主の手を胸の前で縛り、そこへ芦を差し込み、恥ずかしめを加えたお顔にかれらの不潔な口から痰をべっとりと吐きかけた。主の乱れたひげや髪、マントの上半身は汚物ですっかりおおいかくされてしまった。しかし主は何事も仰せられず、ただその心の中で下手人のために祈っておられた。こうしてかれらは主に無礼を加え、仮装させ、汚してから後方の円形の広間に引きずっていった。かれらは主を足蹴にしたり、棍棒で殴ったりしながら怒鳴った。「そら、わらの王さま出て失せろ!こいつはおれたちにいんぎんなもてなしを受けながら議長さまの前に出なければならぬのだからなあ。」こうしてかれらが入って来た時、低級な洒落や、神聖な儀式や所作をもじった冒涜をもって、改めて嘲弄を始めた、かれらが主につばきをかけた時、「そら帝王の香油だぞ!」と喝采した。主が中に引きずり込まれたもうや、かれらは嘲笑いながら怒鳴った。「おい、どうしたんだ。貴様はそんなにきたならしい恰好で議長さまの前に出ようとするのか!貴様はいつも他人を浄めようとしてながら、自分はちっともきれいじゃあないではないか!さあ、今きれいにしてやるぞ。」そこへ濁った汚い水の一杯入った鉢が持って来られた。その中には荒っぽいぼろが浮かんでいた。そしてこずき回し、嘲弄し、罵倒し、侮辱的な挨拶や敬礼をしながら汚れてベトベトしたぼろで、お顔や肩を見かけは洗ったような恰好をしたが、前よりもさらに汚くよごすのだった。最後にかれらは鉢の中味をぜんぶ顔にぶちまけながら言った。「さあ滅法な香油だぞ。三百デナリオもするナルドの水だ。さあベッサイダの池の洗礼だぞ。」それからかれらは主を議員席の中に引きずり込んだ。わたしにはすべての者が怒り狂った悪魔の姿に見えた。それは暗い混乱せる身の毛もよだつような雑踏だった。しかし無法な仕打ちを受けたもうイエズスのまわりに、主が神の子であると宣言されてから、わたしはしばしば輝きや光を見た。そこに居合わせた大勢の者はその光のため少なくとも不安気であった。多かれ少なかれ心の中で、それに気が付いていたらしい。そしてあらゆる侮辱も嘲笑も、主からその威厳を奪い去ることはできなかった。盲目的な主の敵はますます怒り狂うことによって、またそうすることによってのみかえってこの光を感じているようだった。わたしは主の光栄は非常にはっきり見えていたので、大祭司が主のお顔をおおいかくしてしまったのも、かれが主のおんまなざしにもはや耐えられなくなったためとしか考えられない。




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