御聖体と聖母の使徒トップページへ    聖人の歩んだ道のページへ     不思議のメダイのページへ    聖ヨゼフのロザリオのページへ



二四  イエズス、ピラトの前にひかれたもう



 主は無数の巡礼であふれている町の一番繁華なところを通って引かれて行った。まずアンナ、カイファ、その他衆議所の議員たちが晴れ着を着て行列の先頭に立った。律法書もいっしょに運ばれて行った。その次には多数のファリサイ人、律法学士、その他主の告訴の時、目立ってよく活動したことが認められたユダヤ人らが続いた。それから少し間をおいて、われわれの愛すべき主、イエズスが獄吏に縄で引かれ、一隊の兵士と主の捕縛の際に居合わせたあの六人の役人に取り囲まれながら来られた。無数のあばれ者があちらこちらから押しよせ行列に加わった。途中至る所、民衆が群れをなし、ひしめきあって行列を待ち構えていた。

 イエズスは編んだ下着を着ておられるだけであった。それは痰や汚物で見る影もなく、汚れ果てていた。その首には膝まで届く長く巾広い鎖が下がっていた。そしてそれは一足ごとに痛々しく膝を打った。両手は昨日のように縛られ、四人の獄吏がその帯に結びつけてある綱を引いていた。主は昨夜の恐るべき虐待によって全く変わり果てていた。髪もひげも乱れ、顔は青ざめ、殴られたために腫れ上がり、紫色になっていた。そしてよろめく悲惨なお姿だった。主は嘲弄と虐待を受けつつこういう有様で駆りたてられたもうた。無数の悪人たちが狩り集められた。かれらは枝の主日に主が荘厳に入城された光景をもじって主を愚弄した。かれらは主にあらゆる侮蔑的な王の称号を浴びせかけ、石や、棍棒、木片、汚いボロなどをおん足の前に投げつけた。獄吏たちはその縄を引っぱり主をしてその邪魔者の上をわざと歩かせた。このように道程は初めから終わりまで虐待の連続であった。

 最も同情にあふれ最も聖なる主のおん母は、マグダレナとヨハネと共にカイファの家から程遠からぬ所で待っておられた。かれらはある建物の隅に立っていた。聖マリアのお心はいつもイエズスと共にあったが、おん子が身近においでになるとその愛に耐えがたく、聖母は主の方に駆りたてられるのであった。聖母はおん子がどうなっておられるかよくご承知であった。しかし今や哀れな恐るべき事実が目前に迫って来た。傲慢な怒りに満ちたイエズスの敵が過ぎて行く。神の司祭はサタンの司祭となっていた。それは恐ろしい光景であった。しかもその上に民衆の叫びと騒ぎ!偽りの誓いを平気でやってのけるあらゆるイエズスの敵と告発者!最後に神のおん子自身。かれは嘲笑と呪いの轟々たる中を変わり果てて、虐げられ、縛られ、殴られ、歩くというよりむしろよろめきながら、残忍な獄吏に縄でひきたてられていく。聖母はその時、もし主がこの恐ろしい地獄の騒ぎの真ん中で、ただ一人の冷静な人物、ただ一人の祈る人でなかったならば、決して主を見出すことが出来なかったであろう。主が近づきたもうや、聖母は忍びやかに嘆き悲しまれた。「ああ、あれがわたしの子ですか?おお、あれがわたしの子だ。おおイエズス、わたしのイエズスよ!」行列は行き過ぎた。イエズスは感動の中に聖母をご覧になった。しかし聖母は深い思いに沈んでおられた。ヨハネとマグダレナは聖母をお連れして去ったが、少し元気を取り戻されるとヨハネは聖母を再びピラトの館にお連れした。イエズスは困難・苦境に際し、友に捨てられるということをこの途中で経験されねばならなかった。すなわちオフェルの住民たちも、この通り道に集まっていた。しかしイエズスがかくも変わり果て、軽蔑されているのを見るや、かれらの信仰もゆらいだ。かれらは王、救世主、神の子たる者がかような有様になり果てることを理解できなかった。かれらもまた過ぎ行くファリサイ人たちから主の帰依者であるがゆえに罵られた。「おい、ここにおまえたちの王さまがおいでになるぞ!さあご挨拶申し上げろ!今となっちゃこいつの奇跡もおしまいだ。大祭司さまがこいつの魔法をかけちゃったからな。」するとよりよき者は疑惑の中に引き返し、かれらの中の悪人たちは嘲弄しながら行列に加わった。




次へ         前へ戻る             キリストのご受難を幻に見て 目次へ