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三五  初めて倒れたもう



 狭い道はふたたび少し広くなり登り坂となりはじめた。そこには道のまんなかにくぼみがあり、雨降りの時には水や汚い物がたまった。また、またいで行かなければならないほどの高い石もあった。エルサレムの他の通りにもそういう場所は多く見受けられるが、ここよりももっとひどい所もあった。イエズスは重荷をになわれて、ここまで来られた時、もはや一歩も進むことが出来なくなった。獄吏は主を無慈悲にも引っぱり駆り立てた。十字架をになっている主はこの飛び出た石の所で全身地上に倒れた。重い十字架は主のかたわらにころげた。駆り立て役の獄吏は主を呪い、足げにした。行列はとまった。騒ぎが起こった。主は助け起こしてくれる者を求められるが、空しく手を差し伸べるだけであった。主は静かに言われた。「ああ、間もなくすむことだ。」そして祈られた。ファリサイ人は怒鳴った。「起きんか。引き立てろ。ぐずぐずしていると死んでしまうぞ。」

 ここかしこの道ばたに恐れおののく子供を連れて泣いている婦人がいた。神の助けによって強められ、主が頭をあげるや、悪魔のような悪者たちは主を助け起こすどころか、茨の冠をふたたび主にかむらせた。虐待を加えながら、かれらは主を引き起こし、ふたたび十字架をその肩にのせた。茨の冠がはば広いので重い十字架をになうためには今や主はいたましくも茨で傷つけられた顔を一層ひどく曲げねばならなかった。それは恐ろしい苦しみであった。このようにして主は、新たに募る苦しみを忍びつつ、登り坂をよろめきながら歩まれた。




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