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四九 イエズスの第四のお言葉
全く重苦しい静けさのひと時が来た。多くの人々は町の方へ逃げた。ファリサイ人たちの悪辣きわまる呪いの言葉もやんだ。馬屋ロバはすりよって頭をたれていた。あらゆるものがもやに包まれた。
イエズスは十字架の上で想像もおよばぬ拷問のお苦しみの中に、全く見捨てられ慰めなき状態のうちにあった。主は天のおん父に今自分に成就されつつある詩編の箇所を祈られた。わたしは主のまわりに天使の姿を見た。苦しみのうちにイエズスはわれわれのためにある力を勝ち得られた。それはわれわれからこの世につないであるあらゆる絆や関係が絶たれた時、すべてのものから見捨てられてしまった時の極度のみじめさに打ち勝つ力である。それゆえにイエズスと一致している人は、もはやたとえすべてが暗闇となり、あらゆる光、あらゆる慰めを失った時でも、まどい、疑う必要はない。このうちなる暗闇の砂漠を、われわれはもはやたった一人で、また不安気に歩み行く必要はない。
三時ごろ、主は高い声で「エリ、エリ、ラマ、サバクタニ。」と叫ばれた。すなわち、「わが神よ、わが神よ、なぜわたしを見捨てたもうたのですか。」という言葉である。その高き叫びが不気味な静けさを破った時、嘲りの言葉を吐いていた者たちは十字架の方を振り向いた。その中の一人が言った。「あいつはエリアを呼んでいるぞ - 。」他の者は「一体エリアが来てあいつを助けおろすかどうか、見てやろう。」と怒鳴った。
群衆がおどおどと丸く固まって嘆き悲しんでいた時、三十人ほどの馬に乗った上品な一行が通りかかった。かれらは祭りに参加しようと、ヨッペやユダヤの地方から来た人々であった。かれらはイエズスがいかにもいたましく処刑され、また恐るべき現象が自然に現れているのを見て、驚き大声で叫んだ。「なんということだ。この残酷な町を焼き払ってしまえ。そして神殿はその中に建てるな。この町には恐ろしい咎めがおおいかぶさっているぞ。」
この気品ある外来者の発言は群衆の心に痛くひびいた。至る所で不平や嘆きの声がわき起こり、よき心を持った人々は一所に集まって来た。それで一方は嘆き、訴え、また他方ではこれに対抗して嘲弄し、あばれまわる二つの群れができ上がった。ファリサイ人の声はだんだんと細くなった。そして民衆の暴動を恐れて隊長アベナダルと相談した。それによって市街との連絡を断つために、城門が閉鎖された。またピラトに伝令を走らせ、暴動を防ぐに足りる兵力の増強を願った。その間隊長は民衆を刺激しないように、嘲笑いをすっかり禁じ秩序を保った。
そのうちにあたりは少し明るくなった。十字架上の主の体は全く蒼白となった。それほど主は血を流されたのである。