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六九 ご昇天前の数日間
最後の日の頃、イエズスは使徒や弟子たちとまったく自然に交わって居られた。主はかれらとともに食し、かつ祈り、多くの道をともに歩み、主がかれらに以前教えられたことをすべてくり返された。
主はまたシレネのシモンが、ベトファゲとエルサレムの中間の畑で働いていた時にお現れになった。救い主は大いなる輝きの中に漂うように近づかれた。シモンは地上に打ち伏し、救い主のみ足の前の地面に接吻した。主はかれに黙っているようにおん手をもって合図され、次いでお消えになった。附近にいた他の働く人たちもまた主を認めて、地上にうつ伏してしまった。
イエズスが使徒たちとともにエルサレムに近い道を歩いておられた時、多くのユダヤ人たちもまたはっきりとそのおん姿を認めた。かれらは驚いてかくれてしまうか、あるいは大急ぎで家の中に走りこんでしまった。
使徒や弟子たちすらも、復活とともに歩いていることに幾分の恐れを感じていた。主がなおいくらか幽霊のようなものを帯びておられたことが、かれらを臆病にしていたのである。
イエズスはまた他の土地にもご出現になった。ベトレヘムやナザレト、特に主や聖母とお知り合いの人々のところにお現れになった。そして至る所にその祝福をおひろめになった。
主を見た人々は信仰し、使徒や弟子たちに従った。
ご昇天の二日前に、私は主が五人の弟子たちとともにベタニアに来られたのを見た。そこにはまた聖母が他の婦人たちとともにエルサレムからおいでになった。ラザロの家の周りには、イエズスがかれらの許から間もなくお去りになるだろうとの知らせを受けて、主にもう一度お会いし、お別れしようとする大勢の信者たちが集まっていた。救い主が家の中にお入りになると。人々は中庭に入れられてから門が閉ざされた。
イエズスは使徒たちや弟子たちとともに、立ったままで間食をお取りになった。その時かれらはいたく泣いたので、主は、「愛する兄弟たちよ、なぜ泣くのか?この婦人をご覧!この人は泣いていないではないか!」と仰せられ、他の婦人たちとともに広間の入口にお立ちになっていた聖母を指された。 -
中庭には大勢の来客のために長い机が準備された。イエズスはその人々の方に出て行かれ、小さなパンを祝してお分けになった。そしてかれらが再び立ち去るよう合図された。 -
その時聖母が主にあるお願いを申し上げようとうやうやしくお近づきになった。しかしイエズスはそのおん手をさえぎるように上げられ、その願いはお聞きできないと仰せになった。しかしマリアは謙遜に感謝しつつお戻りになった。師はラザロとは特に感激的なお別れをされ、かれを祝し、そのおん手をかれに差しのべられた。ラザロは最近ずっとその家の中にかくれていたが、かれは今度イエズスが使徒や弟子たちとともにエルサレムに出発された時もまた家に残っていた。
師はかつての枝の主日に歩まれた道を行かれたが、しかしいろいろの寄り道もされた。一同は四つのグループに分かれ、大きな間隔をおいていた。
十一人の使徒はイエズスとともに先行した。最後には聖婦人たちが続いた。私は主が輝きつつ一同の上に抜きんでていられるのを見た。そのおん傷痕は私にはいつもは見えなかった。しかし私がそれを見る時は輝いていた。一同は大いに意気消沈し、心を痛めていた。かれらは互いに「主は今までも度々われわれの真ん中で消えてしまわれたではないか!」と語り合っていた。かれらは今なお主がかれらを置き去りになさろうとは信じようとしなかった。ただペトロとヨハネだけは平静に見え、主のことをずっとよく理解していた。イエズスはたびたび立ち止まり、かれらに多くのことをお教えになった。
この道はあちこちで、ユダヤ人の働いている小さな美しい庭の傍を通っていた。この人たちは顔を手でおおい地面にうち伏すか、あるいは茂みの中に逃げ込んでしまった。私はかれらが恐怖あるいは感動からこうしたのかを知らない、またかれらが主を見たかどうかも知らない。
一度私はイエズスが弟子たちにこう仰せられたのを聞いた。
「もしこれらの村がすべてお前たちの説教を信じ、他の者らが信者たちを追放し、一切が荒れ果てるならば、その時は悲しむべき時となるであろう。お前たちは今はまだわたしを理解していない。しかし最後の晩餐をわたしとともにしたならば、わたしを理解するであろう。」
ニコデモとアリマテアのヨゼフは広間の前室で食事を用意していた。弟子たちは廊下で食卓についていた。食事の上には小さなぶどう酒の壺と、小さなパンで囲み、美しい野菜でいろどった皿があり、その上には魚がのっていた。
イエズスが弟子たちと一緒に来られた時は、太陽が沈み、夕闇が迫り始めていた。聖母。ニコデモおよびヨゼフたちは主を門口でお迎えした。まず救い主はそのおん母とともに、聖母の部屋に入られたが、弟子たちは玄関の方に行った。
後になって、弟子たちや聖婦人らが到着するとイエズスはかれらの方においでになった。
師は食卓の中央にお立ちになった。ヨハネは主の傍に立っていたが、かれは他の者よりもずっと明るかった。かれの性質はまったく子供のようで、すぐ悲しむかと思うと、またすぐに慰められほがらかになるという調子であった。 -
食卓の上にはランプがともされていた。ヨゼフとニコデモが給仕をした。私は聖母が広間の入口にお立ちになっているのを見た。 -
イエズスは魚とパンと野菜を祝し、それを一同に回させられた。主はその時大変真面目にお教えになった。食事の終わりには主はまた杯を祝し、それで飲まされてから、お回しになった。
この愛餐が終わってから一同は広間の前の木の下に集まった。師はそこでなお長い間かれらに語り、最後に一同を祝福された。
主は聖婦人たちの前にお立ちになっておられた聖母にお手を差し伸べられた。一同は深く感動し、主がかれらの許を去られる時に皆はいたく泣いた。それは少しもあらわな外面的な涙ではなく、あたかも霊魂が泣いているようであった。
私は、ただ聖母だけがお泣きになっていないのを見た。 -
一同は実に真夜中になるまでここに集まっていた。