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七二  最初のミサ



 聖霊降臨後八日目に私は使徒たちが夜通し活動しかつ祈っているのを見た。しかし夜明けにかれらは大勢の弟子たちとともに神殿に行った。聖母もまたその付き添いの婦人たちとともに赴かれた。

 神殿は祭があるらしく、入口の前には凱旋門が立てられていた。この門の下でペトロは大いなる力をもって大勢の人々に語った。かれは鞭あるいは十字架などいかなる拷問の苦しみも、イエズス・キリストを公然と宣べ伝えることを妨げることはできないと堂々と言った。かれはまた神殿に入り、イエズスが説教された教座で語った。私は全使徒と弟子たちが一度高らかに力強く「その通りだ」と言って、ペトロの話しを中断したのを聞いた。

 かれらがここで祈っている時、私は輝ける雲が神殿の上にたなびき、光がかれらに降ったので、ランプの焔がまったく暗く赤くなってしまったのを見た。

 八時頃かれらは神殿を去り、異教徒の中庭に二列に並んで一大行列を作った。先頭に使徒、次いで弟子たち受洗者、最後に新しき改悛者の順に並び晩餐の家に向かった。

 聖母は至聖所の前で一人お祈りをするために、すでに婦人たちとともに神殿から立ち去っておられた。マグダレナもまた前室であるいは立ち、あるいは跪きつつ腕を広げて祈っていた。他の婦人たちは池の方に行った。そこには婦人たちのために教会の傍に庵が立てられ、そこに二人ずつ住んでいた。そして洗礼衣を洗ったり、縫ったりし、また他の仕事をしていた。

 行列が晩餐の家に到着すると、新しい改悛者はその外に並んだ。ペトロとヨハネは晩餐の広間に入り、聖母を玄関の門の入口に案内した。ペトロは新しい改悛者に語り、かれらを小さな組に分けて聖母の前におつれし、かれらの共同の母として、聖母にかれらをお与えした。一同はその時マリアの祝福を受けた。

 その後で私は晩餐の間における荘厳な礼拝式を見た。側室との間の仕切りは再び取りはずされた。至聖所の上には、花を飾った緑の冠が下がっていた。白い覆いをかけられた晩餐の杯の両側にはランプがともされていた。祭壇にはなお小さな杯と、パンの入った皿とが置いてあった。それらには覆いがかけられていた。その後ろには水とぶどう酒の容器をのせた皿があった。ペトロは司教のようなマントを着てミサ聖祭を行い、ヨハネと小ヤコブがこれに仕えた。私はすべてがイエズスが晩餐のご制定の際になされたように行われたのを見た。この時もまた犠牲が捧げられ、注がれ、手が洗われ、また奉献の言葉が唱えられた。祭壇の一方には書巻が置いてあった。それは二行に書かれ斜面の机の上に置かれていた。そして一枚が読み終わるとその机の後に投げ下された。そこには数枚の書巻がかさねてあった。

 ペトロが御聖体を拝領してからかれらはミサに仕えた二人に授けた。その後ヨハネがまず聖母に次いで使徒と、その後で司祭職を授けられる六人の弟子に、そして最後に多くの他の者たちに御聖体を授けた。一同は入口で跪き、二人の者が両側で持っている狭い布を自分の前に持った。この人々はしかし皆杯は受けなかった。

 次いで六人の弟子の司祭職の叙階式が行われた。マリアはかれらのために祭服を持ってきて祭壇の上に置かれた。その弟子はザケオ、ナタナエル、ヨゼフ・バルザバス、バルナバ、ヨハネ・マルコ、および老シメオンの息子エリウドであった。かれらは、小さな巻物で祈りをしていたペトロの前に二人ずつ跪いた。ヨハネとヤコブは灯を手にして立ち、その手を弟子の肩に置き、ペトロは新司祭の頭にその手をかざした。それからペトロは髪を少し切り、ヨハネの持っていた小箱の頭と指とに塗った。最後にかれらに司祭服が着せられた。わたしはすべてこれらの所作が現今よりも簡単であるが、しかしずっと荘厳に行われたのを見た。この儀式の終わりに、ペトロは御聖体の入っている大きな晩餐の杯をもって一同を祝福した。

 マリアはこの後で、ベトサイダの池の教会に行かれた。使徒、弟子および受洗者たちは歌をうたいながら行列を作ってそこへ行った。マリアは祭壇の前の内陣で跪いてお祈りになった。ペトロは教座に上り、新しい教団の秩序について語った。だれも他の者より多く持ってはならぬこと、各自はその持ち物を分配し、新たに加わった貧しい者のために心配せねばならぬことなどを語った。そしてかれは神に救い主の恩恵と祝福とを感謝した。

 それから洗礼が行われた。それには大勢の使徒が従事した。私はしばしば輝く雲が受洗者の上に注ぐか、あるいはその上に光が降るのを見た。受洗者は驚くほど強められ、変容し、変化した。人々がその財産を離れ、イエズスの教団に参加しようとしてはるばる遠方からくるのを見ることは非常に感動するべきものであった。




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