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七四 足の悪い者の治癒
ペトロは他の者よりも多くの奇跡を行った。かれは悪魔を追い出し、死者をよみがえらせた。しかもわたしは天使がかれの前に先回りをして人々の方に行き、痛悔し、ペトロに救いを求めるように促しているのを見た。また足の悪い者の治癒もわたしは見た。
ペトロがヨハネおよび二、三の弟子とともに神殿に行ったのは午後三時頃であった。その時人々が一人の足の悪い男を担架にのせて神殿に上ってきた。ペトロとヨハネは昇殿の途中でかれと二、三言葉をかわした。それからペトロが神殿の前で火のような熱心をもって話しをしたが、大勢の人々がそれに聞き入っていたのをわたしは見た。その間に出口は兵卒のために占領されてしまった。わたしは司祭たちがあちこちで協議しているのを見た。
それからペトロとヨハネは神殿の方に向かった。足の悪い者は門の前にいて、ペトロとヨハネに喜捨を乞うた。かれはまったくへし曲がったように、左の肘をついて横たわり、右手で松葉杖をついて立ち上がろうとしたが駄目であった。ペトロはかれに「わたしを見なさい!」と言った。かれがそうするとペトロはさらにつづけて、「金や銀なぞはわたしは持っていない。しかし私が持っているものをあげよう。ナザレトのイエズス・キリストの名によって立ち上がって歩きなさい!」と言った。ペトロはその時足の悪い者の右手を持ち上げ、ヨハネはかれの肩の下を支えた。するとその男はまったくうれしそうに、力強く自分の足で立ち上がった。わたしはかれがなおり、飛び上がったり、歓声をあげたりしながら神殿の中を走り回っているのを見た。
座席についていた十二人のユダヤ司祭は、首を伸ばしてこの騒ぎを眺めていたが、人々がこのなおった人の周りにますます多く集まってくると、その席を立って戻って行ってしまった。
しかしペトロとヨハネは玄関に入って行き、イエズスが十二才の時教えられた椅子に上ったのを見た。かれらの前には、あのなおった人が街や他郷からきた大勢の人々に囲まれて立っていた。ペトロはそこで長い間感激をもって語っていた。しかしすでに暗くなった頃、わたしは人々がかれとヨハネおよびなおった人を捕らえ、カイファの法廷の牢獄に監禁したのを見た。
翌朝三人は、神殿の兵卒から暴行を加えられながら牢から出され、イエズスが議員の前に立たれた時と同じ階段に立たされ、カイファや他の司祭から訊問された。ペトロは大いなる熱心をもって語った。結局かれらは放免された。
他の使徒たちは晩餐の家で捕らえられた者のために絶えざる祈りに夜を明かした。ペトロとヨハネが戻ってきて出来事をみなに語ると、かれらの喜びは爆発して高らかに感謝の祈りとなった。するとあたかも主がかれらの中にましまし、その祈りを聞き入れられたことをかれらに告げたもうかのように家が揺らいだのであった。
すると小ヤコブは、主がガリラヤの山で出現された時、主がかれらに、「ペトロとヨハネが捕らえられ、再び放免されたならば、みなは少し引き込んでいなければならぬ。」というご忠告を与えられたと語った。この知らせを聞いて使徒は一切を閉鎖した。ペトロは御聖体を袋に入れ、首にかけてベタニアに移った。かれらは三組に分かれて行った。聖母や他の婦人たちもまたベタニアに行った。ベタニアでは使徒たちは、弟子の宿舎や、シモンの家やラザロの所で非常な熱心をもって教えた。かれが再びエルサレムに戻ってきた時には、前よりもさらに熱烈となり、勇敢となっていた。
間もなくペトロはヨハネや他の七人の使徒に伴われて再び神殿に行った。そこには非常に沢山の病人がテントの下の担架に横たわっていた。わたしはペトロがかれらを癒しているのを見た。他の使徒も癒したが、しかしむしろペトロに対して助手的な地位にあった。病人が二列になって向かい合って寝ている所では、ペトロが一方の病人を癒している間に、かれの影が落ちた反対側の者もその病気がなおってしまった。