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九 イエズスご苦難の大いさを味わいたもう
イエズスは悲しみにあふれ、洞穴に戻られると、両手を差し伸べ顔をおおうてうち倒れ、天のおん父に祈られた。今やご心中には新しい闘いが始まった。天使が主に近づき、贖罪のための苦難と、その範囲とを長い一連の幻影で示した。そして堕落前人間に与えられていた光栄と、いかにすべての罪がその起源を第一の罪に発しているかを示した。主は罪がどのように人類の肉体や精神力に影響しているか、またいかにあらゆる罪責をご自身に引き受けねばならぬかを見たもうた。これらを天使はあるいは個々に、あるいはまとめて一連の幻影のうちにお見せした。わたしは天使が幻影を指を上げて示しているのを見た。その声は聞こえなかったがその言う所を了解した。
主の霊魂がこの贖罪の苦難の視幻によってどれほどの恐怖と苦痛を覚えられたかは、どんな言葉をもっても言い表すことはできない。主の霊魂は罪の快楽に対抗する苦難の意義を理解されたばかりでなく、あらゆる種類の拷問の道具をごらんになり、それを使う者の悪辣さ、またその上罪あり、あるいは罪なくして、この道具によって苦しまされるものの怒りや、焦慮などに戦慄された。主はまことに全世界の罪を負い、かつ感じられた。主はすべてこれらの苦痛と悲嘆とを見て血の汗が流れるほどの恐怖におそわれた。
余りの苦痛にキリストの聖なる人性が憂い、かつおののいておられるのを見て、天使たちは同情に動かされた。それは天使たちが主をどうかしてお慰めしようと願っているように見えた。わたしは神の玉座の前に天使たちが懇願しているのを見た。神のご慈悲と正義、またおん自らを犠牲にする愛との間に、瞬間、あたかも葛藤が起こったようであった。わたしはキリストの神的意志がおん父の下にだんだん戻りたもうような幻影を見た。それは主の人間的意志が苦難を逃れ、緩和するよう一生懸命闘い、願ってはいるが、それをすべて聖なる人性に受けさせるためであった。わたしはこのことを天使が主を慰めようと渇望していたその瞬間に見た。主はわずかの慰めを得られた。
しかし再び天使たちの姿は消え去り、さらに新たな恐怖の一団が主のご霊魂に迫って来た。